股関節脱臼の病気について
股関節脱臼は、年代、種別を問わず、どのワンちゃんにも起こります。
脱臼を起こしたら、大体は足が上がったままとなり地面に付くことを嫌がります。
その他、後ろ足に痛みが生じる疾患として、膝蓋骨脱臼、前十字靭帯断裂、骨折、悪性腫瘍、ヘルニアなどがありますが、股関節脱臼に至ってはレントゲン検査ですぐにわかることが多いので、後ろ脚に異変を感じたらすぐに受診することをお勧めします。
当院の股関節脱臼の治療方法について
レントゲン撮影
脱臼が疑われたら、速やかにレントゲン撮影をおこないます。骨盤にある寛骨臼という窪みに大腿骨頭という丸い部分がはまっているのが正常です。画像では明らかに片側がズレているのがわかります。これが股関節脱臼の状態です。
徒手整復
股関節脱臼に関しての最初の治療法は、メスをいれないで行う徒手整復です。基本的には麻酔をかけて行います。外傷性など、股関節に問題が無い場合は脱臼を整復したらそのまま落ち着くこともあります。しかし、「時間がたっている」「筋肉が少なくて脱臼を戻しても関節を支えられない」などの場合は、簡単に再脱臼することがあります。
手術
股関節形成不全などが背景にある脱臼は戻してもすぐに外れるか、寛骨臼に大腿骨頭を支えるくぼみがない場合は脱臼を戻すことすらできません。徒手整復しても再脱臼してしまう場合、または戻せない場合は手術が必要となります。
大腿骨頭切除術
手術として一般的に行われるものに大腿骨頭切除術があります。外れてしまった大腿骨頭を切り取り、わざと関節を離れた状態にする方法です。これにより、骨頭部の摩擦による痛みはとれ、遊離した関節同士がお互いを補完し合うように偽関節という新たな関節の役割を果たす組織を形成してくれます。後はリハビリをしながらまた歩けるようになるのを待つだけです。
メリット
・脱臼する原因となっている大腿骨頭を切除するので再脱臼はありません。
・ある程度手術手技は確立されているので基本的にどのような状態でも実施可能です。
・人工物を利用する手術ではないので、術後感染症の可能性低いです。
デメリット
・解剖学的に正常な状態に戻す手術ではないので、術後歩行まで時間が掛かります。
・患肢が短くなります(しかし、日常生活には支障はありません)。
・術後歩けるようになるのに時間がかかります。
当院の手術の流れ
診療の流れ
当院では術前にしっかりと問診と身体検査を行い、飼い主様の不安と疑問が解消できてからの処置となります。少しでも不安や疑問がある場合は何でも聞いて下さい。解決できるまで何度でも説明します!
以下から手術写真ですので、苦手な方は見ないようにしてください。
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Step
- 大腿部の切開
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罹患している側の大腿部を切り開いていきます。大事な筋肉が重なっており、後肢に伸びる血管や神経が多いところなので、慎重に骨が見えるまで切っていきます。
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Step
- 靭帯剥離
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筋肉を剥がしながら、脱臼した大腿骨頭を露出させます。骨盤と大腿骨は強靭な靭帯で繋がっているので、上手く露出させるためには靭帯付着部を丁寧に剥離する必要があります。
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Step
- 骨頸部切除
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大腿骨頭の下側の細くなっている箇所(骨頸部)を切ります。この部分が残っていたり、丁寧な切られ方がなされていないと、術後の痛みが続いたり、偽関節が上手く構築されなかったりと影響がでるので、確実な手技が必要となります。
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Step
- 術後
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術後は、わずかに肢が短縮し多少の関節可動域が失われますが、日常的な生活にはほとんど支障がない程度まで回復します。術後早期の患肢使用が推奨され、積極的なリハビリテーションが重要です。